日本財団助成事業「聴覚障害に関わる支援人材育成を目的とした遠隔手話教育システムの構築」
手話サポーター養成プロジェクト室

人材育成

日本手話習得

「言語としての日本手話」(ⅠA・ⅠB)(ⅡA・ⅡB)、「手話とろう文化」の授業の一部は、公開講座として受講体験することができます。


「言語としての日本手話」(ⅠA・ⅠB)(ⅡA・ⅡB)の授業で使用している手話テキストです。
やってみよう日本手話① 試作版ver.2(2/2
※ファイルにはパスワードをかけております。詳細については、手話サポーター養成プロジェクト室までお問合せください。
 Mail:SLSDP[at]jimu.gunma-u.ac.jp(手話サポーター養成プロジェクト室) 
 [at]は、半角アットマークに置き換えてください。



「言語としての日本手話」(ⅠA・ⅠB)(ⅡA・ⅡB)

1.授業の概要と対象者

日本手話の基本的な文法と構文を習得し、社会生活全般の話題について、日本手話でコミュニケーションする力を深めます。授業は演習形式で、ペアワーク、ロールプレイ、プロジェクト学習など、日本手話のやりとりを必要とする言語活動が中心です。ろう児・者とスムーズに意思疎通を図ることができる程度の日本手話を身につけたい学習者向けの授業です。 



2.学習の到達目標

・日本手話で、社会生活全般を話題にした会話ができるようになる(全国手話検定試験2級相当)
・日本手話の基本語彙1,500語を習得する
・聴覚障害者を始めとする配慮の必要な人々とのコミュニケーションにおける基本姿勢を身につける


3.どんなふうにして日本手話を学ぶの?

1)「理解可能なインプット」を大量に得られるようにするための土台づくり

言語形式
(form)

文法、語彙、発音、形態など「どのように」言葉を使うのか

意味内容
(meaning)

話題となるトピック、テーマ、メッセージなど「何を」伝えているのか

言語機能
(funtion)

コンテクスト、状況、タスク、使用目的など「いつ」「どこで」「何のために」言葉を使うのか

第二言語習得に成功する条件の1つとして、「理解可能なインプット」(comprehensible input)を大量に取り入れることが大切です。全く勉強したことのない外国語を耳にしても、単なるヒトの音声としか認識できません。ある程度理解ができるインプットであって初めて、理解ができていない部分の「言語形式」「意味内容」「言語機能」に注意を向け、言語として学習することができるようになります。  
そのため、1年目の日本手話学習では、「理解可能なインプット」を十分に得られるようにするための土台づくりに力を入れています。

①目で「聴く」ことに慣れる
手話言語は、目で「聴き」、顔や身体を使って「話す」言語です。ほとんどの人にとって、視覚−身体動作モダリティを使用する言語を学習するのは初めてのことになります。手話の「音韻」意識を育て、手指表現と非手指表現(顔の表情、頭部や肩の動き、身体の向きなど)両方の言語的要素を同時に読みとることに慣れていけるように、学習者の言語レベルに合わせて、学習者にとって理解しやすいインプットとなるようにすることを心がけています。

②日本手話の文法や構文を学ぶ
学習の初期段階で集中的に日本手話の文法や構文について学びます。日本手話の文法や構文について解説するときには、手話に読みとり通訳をつけることで、母語/第一言語である日本語で、その文法項目について深く理論的な理解できるようにしています。また、「否定文を作るとき、日本語では『〜ナイ』をつければよいけれど、日本手話では、意思の否定、存在の否定、可能性の否定など、否定する内容によって表現が異なる」というように、日本手話と日本語の文法的相違を分析的に学習します。
学習する文法項目については、「言語としての日本手話IA」のシラバスにある授業スケジュールをご参照ください。

③日本手話の語彙を増やす
日本手話の文法や構文をしっかり理解していても、語彙力が不十分では日本手話を見てもどんなことを話しているのか理解することができません。授業で使用する語彙を中心に、毎週約50語ずつ宿題として手話単語を学習していきます。 

2)使える日本手話にするための「アウトプット」の重視
「語彙も文法も知っているはずなのに、いざ話そうとすると出てこない…」というのは第二言語学習でよくあることです。知識として知っている日本手話から、コミュニケーションとして使える日本手話にしていくために、学習者自身がアウトプットする活動を重視しています。このアウトプットとは、「何をどのように言おうか」と考えなければならない状況下において日本手話で「話す」ことであり、与えられた文を日本手話で表現したり、教師の手話表出に追随していくといった表出練習ではありません。インフォメーションギャップ(情報格差)、チョイス(選択権)、フィードバック(反応)の要素を含む言語活動が必要となるタスク(課題)を達成していく過程で、自身の言語知識の穴に気づいて理解を強化していったり、言語知識を無意識的に使う力(自動化)を高めていくことができます。 

3)言語形式・意味内容・言語機能を結びつけて日本手話を使えるようにする
言語習得とは、言語形式・意味内容・言語機能の結びつき(form-meaning-funtion connection)の学習です。第二言語習得の成功の鍵は、「理解可能なインプットを大量に得ること」「アウトプットを十分に行うこと」の2つであると述べてきましたが、このインプットとアウトプットを通じて、言語形式・意味内容・言語機能の3つの要素を結びつけて、日本手話を運用できるようにしていく必要があります。
日本手話の文法や構文について体系的に学ぶこと(構造シラバス)は、成人の学習者にとって日本手話習得の学習期間を短縮させうる可能性を有しているのですが、一方で、そのような言語形式における知識があるだけでは、どういう状況でその文型を使用すればよいかわからない、ということになってしまいます。そのため、学んだ言語形式を、意味のある伝達活動の中で使用することで(概念・機能シラバス)、言語形式・意味内容・言語機能に関する言語知識を結びつけて日本手話のコミュニケーション能力を高めていくようにします。 

4)母語/第一言語で語ることを日本手話でも語れるようにしていく
成人の第二言語学習者は、様々な物事の概念や知識、そしてそれらを表現する語彙を母語/第一言語を通して身につけています。それらの概念や伝えたい意味内容を、日本手話ではどのように表現するのか、ということを学べばよいわけですから、日本手話の音韻意識や視覚-空間的言語構造の感覚が育ってきたら、複雑な概念を取り扱うトピックスも取り入れていきます。例えば、「自動車は文明の利器か?」というテーマでディベートを行ったり、ろう大学生の就職活動に関する手話エピソードを見て、障害者の就労に関する法的制度や実際に事業者が行っている合理的配慮を調べて、ろう者に必要なキャリア支援について議論をするといった活動を授業の中で行っています。


「手話とろう文化」

ろう者の言語である「日本手話」の実技指導を通して初歩レベルの会話を手話で表現できるようにするとともに、ろう者の考え方や行動様式を「ろう文化」という異文化理解の視点で捉えていくことで、身体状況、言語、文化の異なる者の多文化共生社会のあり方について見識を深めます。
「日本手話に少しふれてみたい」「簡単な会話程度の日本手話が使えるようになりたい」といった、初歩レベルの日本手話(全国手話検定試験4級相当)を学びたい学習者向けの授業です。 



「手話と情報アクセシビリティ」

ろう者の言語である「日本手話」の実技指導を通して初歩レベルの会話を手話で表現できるようにするとともに、聴覚障害に関わる情報アクセシビリティの課題を理解し、多文化共生社会のあり方について見識を深めます。また、「障害」を「個人の疾病や特性に起因するもの」ではなく、「社会や人との関係性の中で構築されるもの」と捉え直すことで、「障害」のある人とない人とが共に生きる社会のあり方について自分なりの考えを深めます。
「日本手話に少しふれてみたい」「簡単な会話程度の日本手話が使えるようになりたい」といった、初歩レベルの日本手話(全国手話検定試験4級相当)を学びたい学習者向けの授業です。